【社告】うさぎ式漫画大賞2021トークイベント開催について今はなきgeocitiesの自作サイトから始まった「うさぎ式読書日記」は、だいたい来年で24年目になります(今ネットで読めるのは2004年からです)。昔から漫画はよく読むのですが、このサイト内でその年に一番良かった漫画を書くようになり、それがいつしか「うさぎ式漫画大賞」となり、「うさ式」の掲載場所を変更したりしながらも年末もしくは年始に発表していました。ここ数年は忙しかったりなんかしてちゃんと発表という形が取れず、Twitterで発表していましたが、今年はちょっと趣向を変えて、友人夫妻が運営する学習塾兼住居兼イベントスペースの「えんぴつ舎」さんからお誘いがあったので、ささやかなイベントしてそこで発表を行ってみようかなと思っています。...2021.12.24 18:11店主日誌評論漫画
奈良で生きていく―大山海「奈良へ」「奈良へ」の物語は作者の分身というべき漫画家小山陸から始まる。そこから毎話パンクスやヤンキー、奈良の平和のために立ち上がるサラリーマンなどの話が点描的に続いていき、そのうちいきなりファンタジー冒険ものの作中作が始まってしまう。一体どういうことなんだ……と思いながら読んでいくと、テンプレ的な冒険物語の世界が徐々に歪みを見せて、まるでそれまで語られてきた物語との融合を求めるように蠢き始めていく。「クソみたいな世界」への絶望感を描く作品はここ数年ですごく増えてきたような気がする。この作品でも、そんな絶望的な世界がひたすら語られていく一方で、気持ちのすくようなカタルシスがちゃんと用意されていて、そういった意味ではエンターテインメントでもある...2021.11.22 14:14漫画
君がこんな人でよかった―石山さやか「Short Trip with Typhoon」石山さやかが「恋人のことを描くということが惚気と受け止められないだろうか」とどこかで話していたのを覚えている。「Short Trip with Typhoon」は2019年に作られたzineだ。恋人と朝早く起きて新幹線に乗り、宿に泊まって近所の市場や水族館を散歩し、海に浸かって帰ってくるという二人旅が、見開きの片側に手書きのテキスト、もう片側にイラストという構成で綴られている。自分だけの感覚なのかもしれないけれど、恋人と泊りがけで行く旅行はいつでもほの悲しいものだった。ある程度お互いのことを知って、「今度ちょっと遠くに旅行でも行きたいよね」と話して出かけて来たというのに、なんでなんとなくの悲しさに浮き立っているんだろう、っていつも思...2021.05.30 16:02同人誌漫画
漫画と文学と、どちらでもあるものと―同人誌「ランバーロール02」「ランバーロール」は、漫画家の安永知澄、森泉岳土、おくやまゆかがコアメンバーの漫画と文芸の同人誌だ。2019年5月発行の02号で、0号から数えて通巻3号目となる。これまでの2号もそうだったけれど、漫画誌と文芸誌がミックスされたような本で、けれど読んでいるとやはり漫画のウエイトが重いような気がする。2019.05.08 09:39文学フリマ同人誌小説漫画本
猫も、自分も、生きていく ―イシデ電「猫恋人」「猫恋人」は、猫と、猫を飼っている恋人たちの物語だ。そうやって説明すると、猫が出てくる恋愛漫画だとたぶん思われるんだろうなと思う。でもそうじゃなくて、乱暴に言えば「猫」と「恋人」が出てくる漫画だ。この際正直に言うと、自分自身もビームに掲載される度に、これは恋愛漫画じゃない、とか、やっと恋愛漫画になっただとか勝手なことを言っていた。なんていうか、猫がちょろっと出てきて甘かったり苦しかったりする恋愛漫画を読みたいんだったら、他の人を当たってほしいと思う。この漫画の本当にすごいところは、人間が猫と一緒に生活し、人生を生きるってことを正面から描いているってことだ。話は変わるけど、今うちで飼っている猫は15歳になる。43年生きている中で15年...2018.12.11 16:41漫画
最近どんな漫画読んでる? 2018/4/9twitterで漫画家やイラストレーターをフォローしているのだけど、いつも楽しみにしている投稿がいくつかあるけれど、その中でも特に好きなのが日記漫画だ。東京に引っ越した木村いこが「#東京にすむ日記」をアップし始めた。関西人の木村が夫とともに初めて住む東京の日々が、スケッチブックに綴られていく。戸惑うことも多いけど、ごはん食べて家でゆっくり過ごせれたら大丈夫、というところがいい。「おにでか!」の矢寺圭太がたまにアップしている日記もとても楽しい。友達が泊まりに来たとか古いラーメン食べた話とか、そんななんてことない話なんだけど、なにかが起こったからみんな聞いて、な感じじゃ全然ない普通さと、独り身のほの哀しさが残る最後の終わらせ方が、本当に...2018.04.09 12:43同人誌漫画
「純文学」を伝えることば ―ものするひと(1)/オカヤイヅミ自分で小説を書いていたり、読んだりする人はいる。僕もその一人で、そのことを話すと決まって「どんな小説なんですか?」ってことを聞かれる。「純文学」って言って、一体誰が分かってくれるんだろう、って思う。なんてことない話が好きなことや、例えば柴崎友香の小説を面白いと思う感覚を、純文学と言わないで言葉にすることはとても難しい。「ものするひと」の主人公スギウラは、夜警のアルバイトをして生計を立てる純文学作家だ。バイト先で「どんなの書くの?」と言われて答えた時に、聞いてきたおじさんがよくわからない顔をするシーンがあって、まさにこういうことなんだよなあ、って思う。でもじゃあ、なんて説明をしたらよかったんだろう。2018.04.03 10:05漫画
16人の女性作家の「からだ」―<みんみん 0号>2月のコミティア123で販売されたイシデ電主宰の合同漫画誌「みんみん」0号には、わかる人にはびっくりするくらいの豪華な作家が参加している。イシデ電とくれば、コミックビーム周辺の作家なのかなあと思いきや、BE・LOVEやフィール・ヤングからハルタや秋田書店系の作家(と、80年代的地下アイドル)まで、どうやって声をかけたんだろうという16人の多彩な女性作家が、「からだ」というテーマだけを与えられて自由に作品を描いている。多分、おざわゆきとえすとえむと窓ハルカとイシデ電が同じ雑誌に載るなんてことは今後もありえないことだと思うので、それだけですごい。同人誌を出す動機っていうのにはいくつかあるような気がするけれど、この「みんみん」は、普段商業...2018.04.02 17:31同人誌漫画
2017うさぎ式漫画大賞【ノミネート】今年から読んだ漫画を読書メーターでつけることにした。 そうしたら、かなり整理がつきやすくていいなあと思った。 読んでいる漫画は常にこちらで上げている。 あと、今年からはウサヤマブックスにて発表してくことにしたので、よろしくお願いします。あまりダラダラと前説を書かずにまずは、ノミネート作品から書いていこうと思う。 2018.01.01 18:09同人誌漫画
どうにもならない日々の圧倒的な切なさ―敷居の住人(全7巻)/志村貴子男子中学生の本田ちあきは、髪の毛を緑に染めて、学校サボってゲーセンに行くは構内でタバコを吸うわの不良少年だ。でも、ケンカをするわけじゃないし誰ともつるまない。毎日が鬱屈していて、ちょっとしたことでイライラしてしまう。そんなちあきの周りに、同い年で不登校のキクチナナコや近藤ゆか、自分とそっくりの教師兼田とか、生き別れた父とかが現れる。色々な人間関係に振り回されながら、行きどころのないすっきりしない気持ちを常に抱えているちあきが、誰かを好きになったり好きでもない女の子と付き合って振られたりして、さらにモヤモヤしていくといった話だ。こう言いながら、この「敷居の住人」くらい、誰かにあらすじや、面白さを説明するのが難しい漫画もないと思う。3巻...2017.11.12 19:15漫画
最近どんな漫画読んでる? 2017/10/29なんとなくやっていたtwitterで、今年から好きな漫画家を見つけ次第フォローしてみようと思って実践していると、段々楽しくなってきた。一日中つぶやいたり絵をアップしたりバズっている話題をその都度リツイートしたりしているツイッター廃人気味のシギサワカヤとか、息子ネタが面白い山名沢湖とか、すごくきれいで雰囲気のある絵を定期的にアップしている丸紅茜(同人誌「map」もすごいから)、あと、一番好きなのはイシデ電のつぶやきだ。 イシデ電のツイートをずっと読んでいるとわかってくることは、飼っている猫の話、作ったみそ汁とかの話、手芸がとても上手いこと、そしてネームがなかなか通らないことだ。いっつも落ち込んでる様子ながら、猫とともに暮らしているリア...2017.10.29 17:05店主日誌漫画本
最近どんな漫画読んでる? 2017/10/13色々読んでいるんだけどなかなかそれぞれで1本書くのも大変だというまんが関係のことについて、だらだらと書いていきたい。今週は西炯子の「たーたん」2巻と「初恋の世界」3巻が同時発売された。どちらもコメディなんだけど、なんかすごく登場人物の深い部分に踏み込んでいて驚いた。全然違う話なのに、最新刊はどちらも同じような感じになっているのだ。「たーたん」の主人公は人生に失望して自殺を計ろうとしていた話、「初恋の世界」では主人公を含んだ仲良し4人組がそれぞれ不倫の恋や、離婚した元ダンナに出くわしたら大家族になっていたエピソードとか、なかなか重たい。 そして、同時刊行されている理由でもあると思うのが、どちらも主人公が40過ぎである、という大きな共通...2017.10.15 04:16店主日誌漫画