君がこんな人でよかった―石山さやか「Short Trip with Typhoon」石山さやかが「恋人のことを描くということが惚気と受け止められないだろうか」とどこかで話していたのを覚えている。「Short Trip with Typhoon」は2019年に作られたzineだ。恋人と朝早く起きて新幹線に乗り、宿に泊まって近所の市場や水族館を散歩し、海に浸かって帰ってくるという二人旅が、見開きの片側に手書きのテキスト、もう片側にイラストという構成で綴られている。自分だけの感覚なのかもしれないけれど、恋人と泊りがけで行く旅行はいつでもほの悲しいものだった。ある程度お互いのことを知って、「今度ちょっと遠くに旅行でも行きたいよね」と話して出かけて来たというのに、なんでなんとなくの悲しさに浮き立っているんだろう、っていつも思...2021.05.30 16:02同人誌漫画
文学フリマ大阪に出店しました去る9月8日に行われた文学フリマ大阪に、ウサヤマブックスとして出店をしました。 年々出店数も来場者も増えており、全体で510ブース2000人以上の参加者があったということでした。 文学フリマ大阪には堺市で行われていた2016年から参加していて、その頃は所属している現代詩同人「ドードー」としての参加でした。今年はじめの文学フリマ京都からは、「ウサヤマブックス」名義での出店をするようになり、自分がこれまで書いてきた日記とかも並べて置いてみようと思って少しずつ本を増やしてきました。 今回の文フリ大阪は、5月にあった文フリ東京に出品した2種類の日記のまとめ本と、同人で書いてきた詩をまとめた本と、飼っている猫の写真集を持っ...2019.09.10 15:33同人誌うさぎ式読書日記店主日誌文学フリマ詩
漫画と文学と、どちらでもあるものと―同人誌「ランバーロール02」「ランバーロール」は、漫画家の安永知澄、森泉岳土、おくやまゆかがコアメンバーの漫画と文芸の同人誌だ。2019年5月発行の02号で、0号から数えて通巻3号目となる。これまでの2号もそうだったけれど、漫画誌と文芸誌がミックスされたような本で、けれど読んでいるとやはり漫画のウエイトが重いような気がする。2019.05.08 09:39文学フリマ小説同人誌漫画本
5/6文学フリマ東京(キ-09)に出店します直前の告知ですが、「うさやま書房」として文学フリマ東京に初出店することとなりました。文学フリマ大阪に初出店してから3年経ち、次回製本した冊子も4冊になりました。東京近郊にお住まいの方や、来られる予定にされている方も、ぜひ当ブースにお立ち寄りください。会場:東京流通センター第一展示場 ブース:キ-09時間:11:00-17:00地図など詳細はこちら。2019.05.05 17:05詩同人誌文学フリマ店主日誌うさぎ式読書日記本
最近どんな漫画読んでる? 2018/4/9twitterで漫画家やイラストレーターをフォローしているのだけど、いつも楽しみにしている投稿がいくつかあるけれど、その中でも特に好きなのが日記漫画だ。東京に引っ越した木村いこが「#東京にすむ日記」をアップし始めた。関西人の木村が夫とともに初めて住む東京の日々が、スケッチブックに綴られていく。戸惑うことも多いけど、ごはん食べて家でゆっくり過ごせれたら大丈夫、というところがいい。「おにでか!」の矢寺圭太がたまにアップしている日記もとても楽しい。友達が泊まりに来たとか古いラーメン食べた話とか、そんななんてことない話なんだけど、なにかが起こったからみんな聞いて、な感じじゃ全然ない普通さと、独り身のほの哀しさが残る最後の終わらせ方が、本当に...2018.04.09 12:43同人誌漫画
16人の女性作家の「からだ」―<みんみん 0号>2月のコミティア123で販売されたイシデ電主宰の合同漫画誌「みんみん」0号には、わかる人にはびっくりするくらいの豪華な作家が参加している。イシデ電とくれば、コミックビーム周辺の作家なのかなあと思いきや、BE・LOVEやフィール・ヤングからハルタや秋田書店系の作家(と、80年代的地下アイドル)まで、どうやって声をかけたんだろうという16人の多彩な女性作家が、「からだ」というテーマだけを与えられて自由に作品を描いている。多分、おざわゆきとえすとえむと窓ハルカとイシデ電が同じ雑誌に載るなんてことは今後もありえないことだと思うので、それだけですごい。同人誌を出す動機っていうのにはいくつかあるような気がするけれど、この「みんみん」は、普段商業...2018.04.02 17:31同人誌漫画
2017うさぎ式漫画大賞【ノミネート】今年から読んだ漫画を読書メーターでつけることにした。 そうしたら、かなり整理がつきやすくていいなあと思った。 読んでいる漫画は常にこちらで上げている。 あと、今年からはウサヤマブックスにて発表してくことにしたので、よろしくお願いします。あまりダラダラと前説を書かずにまずは、ノミネート作品から書いていこうと思う。 2018.01.01 18:09同人誌漫画
見えない思いを探して―同人誌「babel 創刊号」大阪文学学校時代にお世話になった真銅氏に小説の同人誌の献本をもらった。4本の小説と2本のエッセイが収められていて、それぞれ違った個性のある、ブンガク寄りの一冊だ。特に凄いのは、秋尾茉里の「あさがおの花」だった。精神障碍を持った人たちのデイサービスでボランティアをする主人公の女性は傍ら、自らが「空気を読めない」人間だと言われることについて、カウンセリングや自助グループに参加している。阪神大震災で両親を亡くし、自らが発達障害だと暗に指摘されるという主人公や、相模原事件までが扱われるっていう大変なテーマがあったりするのに、それを一貫した筆致と視点で描ききっている。ただ、起こること、交わされる会話だけが書かれ、それを評価するような書き方はし...2017.11.03 13:12小説同人誌
'17文学フリマ大阪 購入本レビュー5 <キャンプのはなし/野営好太郎>キャンプのはなし/野営好太郎一人でキャンプ場でテントを張り、火をおこして飯を作り、野営を楽しむという、ソロキャンプの世界へといざなう一冊。表紙にいらすとやのイラストを使っていたり、本文には図版もないというシンプルな作りなのに、内容が面白いので読んでいてうれしくなる本。まず、キャンプなんてリア充の遊びだろ、と思っているくちの自分でも、単独でキャンプをする、という行為と聞くと他人事じゃない。微に入り細に入りといった感じではないけれど、あ、これ自分でもできるな、やってみようかな、と思わせるような部分を、本文では上手いこと掬っていくのだ。実際にはテントや道具を買ったり、やり方を知ったりマナーや慣れもいるだろうと思う。でも、全体から読み取れる...2017.10.04 16:20同人誌文学フリマ
'17文学フリマ大阪 購入本レビュー4 <ぬばたま 創刊号/ぬばたま>ぬばたま 創刊号/ぬばたま短歌の同人誌。 様々な経歴や所属の15人の歌人(※)が集まって一冊にまとまったもので、面白いのは全員が1996年生まれ(今年21歳)だということ。そのことには読み終えた後に知って驚いた。全ての歌人にはっきりと違うカラーや印象を感じていたからだ。これはもしかしたら、歴史のある結社や同人誌との違いなのかもしれない。あまり短歌には詳しくないけれど、どれを読んでも穂村弘みたいな短歌だけど「いかにも」であんまり面白くない、ってことが、ネットとか同人誌を読んでいたらよくあって、だからちょっと文フリでも立ち読みをして選んだりしていた。「ぬばたま」全体の印象は、外連味は抑え気味で、どちらかと言えば素直に詠んでいるような自分...2017.10.03 19:06短歌同人誌文学フリマ本
'17文学フリマ大阪 購入本レビュー3 <スーパーはなえ/海鮮丼>スーパーはなえ/海鮮丼(ホタテ&Nicola)車に轢かれそうになったところを助けられた男子高校生の秋穂。その命の恩人である青年の後をつけると、あるスーパーのバックヤードに入っていった……。妙なきっかけでスーパーのバイトを始めることになった主人公と、店長はじめスタッフが織りなす賑やかなコメディ。日常系の物語、それもスーパーものってどんなんだろう、って思った。店の仕事が農産とか畜産とかレジとか各セクションに分かれていることとか、店長(副店長)の役割とか、いろいろとスーパーの仕事というものに詳しくて、それだけでも面白い。主人公は初出勤のあと、シフトの関係で次の勤務が5日後になったりして、いちいちリアル。気軽に楽しく読めるし、登場人...2017.10.01 16:33小説同人誌文学フリマ本
'17文学フリマ大阪 購入本レビュー2 <さよならユーリカ/瓜田すいか>さよならユーリカ/瓜田すいかずっと自分の神だと思ってきたバンド「ハロルドセン」の最後のライブに行くことが叶ったあと、もうその音楽が聴けないというやりきれない思いで慣れない酒を飲み、公園でうなだれていたユキ。その姿を見つけたのはその、「ハロルドセン」のボーカル紙島萌だった――。試し読みコーナーで手に取って、装丁とか、雰囲気とかでなんだか面白そうだなあと思って購入した。そうしたら、すごい良かった。最初の1ページを読んだだけで、どれだけ上手いかが分かる。文章自体に読むことを意識させないきれいなリズムがあるから、主人公ユキと紙島の(そしてルームメイトとの)、繊細な心のやり取りが自然に浮かび上がってくる。物語はユキと紙島が出会ってからのほんの...2017.09.26 17:31文学フリマ小説同人誌本