ぬばたま 創刊号/ぬばたま
短歌の同人誌。
様々な経歴や所属の15人の歌人(※)が集まって一冊にまとまったもので、面白いのは全員が1996年生まれ(今年21歳)だということ。
そのことには読み終えた後に知って驚いた。全ての歌人にはっきりと違うカラーや印象を感じていたからだ。これはもしかしたら、歴史のある結社や同人誌との違いなのかもしれない。
あまり短歌には詳しくないけれど、どれを読んでも穂村弘みたいな短歌だけど「いかにも」であんまり面白くない、ってことが、ネットとか同人誌を読んでいたらよくあって、だからちょっと文フリでも立ち読みをして選んだりしていた。
「ぬばたま」全体の印象は、外連味は抑え気味で、どちらかと言えば素直に詠んでいるような自分の好みの歌が多かった。
いくつか好きなものを書いてみたい。
机にはきみの真似して買ってみた缶コーヒーの缶がまだある 乾遥香
カラオケの個室出ていくたび香る 思い出すならこれだろう恋 大村咲希
きらいっていわれたあとのふりかけは朝にやさしいひかりであるよ 河田玲央奈
はじめての既読無視して植え込みの奥をのぞけば静止する猫 櫛田有希
真夜中の工事現場を見て歩くきみを殺せるきいろい重機 坂本歩実
地下鉄の窓にあんまり意味は無く地下鉄の窓見てる月曜 佐藤廉
好きじゃない人が飼ってるハムスターその水を変える好きじゃない人 初谷むい
たましいは味噌汁ほどの熱を帯びあさりとしじみを区別できない ゆがみ
あと、面白いのはひとつのコンセプトを持った連作が多かったことだ。
カラオケに行ってオールナイトする話や、カザフスタン旅行記、地下鉄のひと駅ごとに一首、恨みを持った彼をどうやって殺してやろうかという話、ジュンク堂への愛について(これがまためちゃくちゃで面白い)、などあって、それぞれの歌が全体の中でどんな効果を出しているのかも楽しみの一つになっている。
21年前なんて一体何してたのかなあ、と、ダブルスコアの歳を重ねている自分のことを考えながら、
次号でのさらなる世界の広がりを期待してしまう。
(シリーズ続く)
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