大人になるということは果たして自由になることなんだろうか、それとも不便でしがらみだらけの世界に生きることなんだろうか。
もっと簡単に考えてみると、今やこれからは、昔よりも楽しくて、未来を考えられるような素敵なものになるんだろうか。
この小説の主人公ハナは37歳の未婚女性だ。
「ちゃんとしてやんなきゃな」と言い出して結婚するつもりの彼氏を見ていて嫌気が差し、婚活をするけれどそれも途中で嫌になる。結婚している妹に、結婚が素晴らしいってどうしてあんたは思えたんだろうね、と何気なく言ったら、馬鹿にすんなよ! って泣きながら言われてしまう。
友人と共同経営している古着屋は順調で、でもやりたいことが相方とすれ違っていき、元気のない中で久し振りに彼と会う。以前彼から結婚しようと言われたことを話していて、酔っ払いながら思わず「そんなに言うんだったら、してやってもいいよ」と言って、その直後に彼には新しい女がいることを知らされるのだ。
この小説は大人の女性が恋に仕事にと大奮闘、って感じじゃない。
結局何をしたいんだろうってこともよく分からず、酔っ払っては言い過ぎてごまかしていつも恥ずかしいことになって、それでもこれだけは譲れないって思いは、ちゃんと自分の中にある。
それなりの態度で他人とか社会とかと付き合っていけるほどには大人で、でも、だからなんなんだ、とも思う。
そんな感じのことが、まじめでグダグダしている主人公のあからさまな日々と、作者のドライで温かいような文体で書かれていく。
僕は主人公とそう遠くない歳の独身男で、読んでて相当ずきずきと来た。じゃあもしそんな女性が読んだなら、一体どうなんだろう。
たぶん、私たちはたくさん自由になっているはずだけど、でも人生そんなに簡単じゃねえんだよ、って居酒屋で言い合えるくらいには共感できるんじゃないかなあって思うんだけど。
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