16人の女性作家の「からだ」―<みんみん 0号>

2月のコミティア123で販売されたイシデ電主宰の合同漫画誌「みんみん」0号には、わかる人にはびっくりするくらいの豪華な作家が参加している。
イシデ電とくれば、コミックビーム周辺の作家なのかなあと思いきや、BE・LOVEやフィール・ヤングからハルタや秋田書店系の作家(と、80年代的地下アイドル)まで、どうやって声をかけたんだろうという16人の多彩な女性作家が、「からだ」というテーマだけを与えられて自由に作品を描いている。
多分、おざわゆきとえすとえむと窓ハルカとイシデ電が同じ雑誌に載るなんてことは今後もありえないことだと思うので、それだけですごい。
同人誌を出す動機っていうのにはいくつかあるような気がするけれど、この「みんみん」は、普段商業雑誌で仕事をしている作家が、もうちょっと描きたいことを自由に描く、というまさに同人誌っぽいゴチャゴチャしてて荒いけどそれも楽しい、みたいな雰囲気に満ちている。

興味深いのは、「からだ」がテーマになったとき、セックスや性について描こうとした作家が多かったんだなということだ。そういうのって、やっぱり描いてみたいんだなあって。
そんな中で、とあるアラ子と(あの「フラグタイム」の)さとが女性器の話を描いていたり、坂井恵理とおざわゆきが色々なお世話をしてくれる男性アンドロイドの話を描いていたりとあちこちで偶然が起こっているところがすごく面白かった。

安永知澄は、身体中に穴が開き角が生えている男か女かもわからない人間同士が、相性の合う穴を求めてセックスを重ねるという話を描いていて、その場で体感しているかのような痛みを理屈を飛び越えて読者にダイレクトに伝えてくるところなんか、作者らしくてさすがだなと思った。

そんな中で当のイシデ電は、すごくちゃんとした短編を描いていて意外だった。
足が大きいことを気にして性格までひねくれてしまった女性と、空気の読めない単純そうな男の話で、これがとっても良かった。
流れは結構パターンだと思うんだけど、それなのになんでいいんだろう、と考えていたら思い立ったのは、ああ、これは谷川史子と似てるなあ、っていうことだった。
谷川史子の読み切りにはひとつの型のようなものがあって、でもいつも素敵で、っていう不思議があるんだけど、そういえば、そういったものがイシデ作品にもあるような気が読みながらしてきて、こんな漫画もどんどん描いたらいいのになあ、と思ったのだった。


みんみん 0号
発行:みんみん 頒価:1200円
https://ishideden.booth.pm/items/761738(でんや BOOTH店)などで販売

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