店主日誌 1)「どんな漫画読むんですか」

「どんな漫画を読むんですか」
と聞かれると、とても困ってしまう。
ワンピースとか、ドラゴンボールとか、キングダムを読むような人だったらどうしよう、と思うからだ。
いつからそうなってしまったのかよく分からないんだけど、みんなが読むような漫画を読まない。貸してもらって読むと、大抵面白いんだけど、自分では積極的に読まない。

長編漫画だと、少年漫画でも少女漫画でも、最初はこじんまりとした日常の中で仲間や家族に囲まれていて、でも、自分の才能が花開いていくにつれて主人公は、もっと大きなステージに進んでいく。
それは更に強大な敵がいる場所や、全国大会や、芸能界だったりして、そんな中で輝いている主人公を競技場の席で両手を合わせて祈りながら見ているだけの、かつての仲間たちとかつての日常が不憫でたまらなかった。
自分もまた、同じように日常に取り残されたような気持ちになったからだ。
僕はずっと、なんであの日常がずっと続かないんだろう、と思っていた。
もっと、自分がいる場所から地続きの世界で起こる話が読みたかった。
だから少女漫画が好きで、「星の瞳のシルエット」を目当てに妹のりぼんを読み、それから別マを経てぶ~けに行って、吉野朔実が大好きになった。
スピリッツも読んだけれど、YAWARA!よりも石坂啓の方が好きだった。

でもまあそれは、「どんな小説読むんですか?」と聞かれたときの困惑とも似ているような気がする(これは、「どんな小説書くんですか?」でも同じ)。
「純文学」と言うと「はあ」と気の抜けた答えが返ってきて、「あの、村上春樹みたいな」と言うと、やっと「あー!」と言われる。
村上春樹は純文学というより「村上春樹」というジャンルになってる気がするけど、他にいい言い回しが思いつかないのだ。

それで、漫画での「あー!」をなにで出したらいいんだろう。
「(あなたにとって)マイナーな漫画」と答えたら、「え、どんなんすか。僕けっこう読みますよ」と必ず聞かれる。
じゃあ、志村貴子とか鳥飼茜とか石黒正数とか言っていいの(これでもわかりやすそうなところを挙げたつもり)? いや、自分が面白そうだと思う漫画は何でも読むので、「~を読んでる」って言えないんだけどなあ、とか悩む。
違うパターンとして、「へー。じゃあ、アニメはどんなの観てるんですか」というのもある。
本当にただ、漫画が好きなだけなんだよー! ということをわかってもらうのは、本当に簡単じゃない。(う)

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