もともと共同でイラストユニットをしていた2人の女性、ひよさとうにさは近くに暮らしていて、でも、ある時それぞれが新しい家を探さなくてはいけないことになった。
家賃も間取りも合わないし、どうしよう、と悩んで、2人は一緒に家を借りることを思いつくのだった。
一般的に言ってシェアハウスっていうのは、学生とか若い年齢の人同士が家賃を節約するためにするようなイメージがある。
ところがこのエッセイに出てくる2人が共同生活をすることを決めたのは30歳を過ぎてから。
仮住まいならともかく、これからのことも考えながら、それぞれがちゃんと暮らしていくことを考えなくちゃいけない。そして、もちろんお互いになにかあって、別居する未来だってあるのかもしれないのだ。
というわけで、このエッセイコミックは、大人のための「ふたりぐらし」の本だ。
生活費はどう折半する? 食事や家事はどうするの? 誰かを家に招きたいときはどうしよう、といったことから、2人で暮らすってワイワイ過ごしてるの? それともお互い干渉しないでいるの? といったことまでみんな、実践してきたことがきちんと書いてある。
でも、この本がとっても面白いのはハウツーではなく、ほとんど全編に渡って2人の距離感について描かれているところだ。
たぶんそれは、どんな取り決めなんかよりも一番、大事なことなんだろうなと思う。
初めて読んだ時、え、ふたり暮らしってすごい! と思ってすぐに誰かと一緒に暮らしたくなった。
それで、実際に友人の女性に勢いで話してみたけれど、「あなたが家を借りて、そこに私が転がり込むならいいよ」とか言われてしまい、実現しなかった。
そう、2人がこのエッセイの中で唯一触れていないのは、互いのセクシュアリティに関する話だ。
男同士であったり、女同士であったり、男女だったりがあって、そこにセクシュアリティや互いの関係性も加わってくると、同居は意外と簡単なものではないのかもしれない。
でもやっぱり、2人でこうやってこれまで暮らしてきたんだよ、ってことをずっと描いてあるだけのこの本は、全く派手派手しい内容じゃないのに、どうなるのかわからないけどものすごくわくわくするような気持ち、ってのが、自然と沸き上がってくるような本なのだ。
最後の章には、2人がどういう家に住みたかったのか、ということについて描かれている。
震災の時に呼び寄せて仮住まいした友人のこと、そしてその時に同時にドイツでルームシェアをしている友人達から掛けられた言葉は、ひとりで、ふたりで、そしてみんなで暮らしたり生きたりしていくってことのあたたかさを改めて考えさせられて、読みながら泣いてしまった。(う)
おひとり様のふたり暮らし(イースト・プレス) / スタジオクゥ ひよさ&うにさ
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